花でもなく蕾でもない、「花びら」の線香花火。
火薬には宮崎産の松煙、紙は福岡県八女市の手すき和紙、その和紙を草木染めで染色し、職人の手によって一本一本丁寧に縒り上げられています。
目まぐるしく表情を変え、儚く消えゆく線香花火。実はその燃え方には、段階ごとに名前がついています。
点火とともに、命が宿ったかのように酸素を吸い込みながらどんどん大きくなっていく火の玉。今にも弾けそうな瞬間は、さながら花を咲かせる前の「蕾」のようです。
やがてパチッ、パチッと一つずつ、力強い火花が散り出します。称して「牡丹」。迷いながらも一歩一歩進んでいく青春時代を彷彿させます。火花の間隔は、徐々に短く…。
やがて勢いを増し、「松葉」のように次々と火花が飛び出します。結婚や出産、子供の成長、優美な火のアーチを眺めていると、不思議と幸せな出来事が重なります。
火花が一本、また一本と落ちていく「散り菊」。静かに余生を送る晩年といえます。赤から黄に変わった火の玉が光を失った瞬間、線香花火の一生は幕を閉じるのです。
線香花火に使われる火薬は0.08グラム。
わずか100分の1グラムの増減で、燃え方が大きく左右されます。
もっともシビアで、繊細な花火といわれる所以です。
専用の道具を用い、一つひとつ丁寧に火薬を盛っています。
手練れが作る線香花火は、途中で火の玉が落ちず、最後まで美麗なる火花を放ち続けます。
特に注意を払うのが、火の玉を受け止める“首”です。
ふくらんだ風船に針で文字を描くように、人差し指と親指に全神経を集中させ、強弱をつけながら撚っていきます。
火薬に使う材料の要となるのが松煙。切ってから30年以上寝かせた宮崎産の松の根っこは、花火づくりに不可欠な油分を豊富に含んでいるのです。
えんじゅ、くちなし、蘇芳(すおう)など、天然の素材を使って和紙を染めます。淡くて、どこかやさしい。自然の中にすっと溶け込む色合いに。
紙の厚さ、目の細かさによって、火のまわり方はまるで変わります。福岡県・八女産の手すき和紙は、火の勢いをスムーズに伝えていきます。
東西の線香花火を含む国産の手持ち花火が26本入っており、2〜3人で十分に楽しんでいただけるセット花火です。パッケージの下部は消火のための紙コップになっていますので、水を入れてご使用いただけます。また、購入者にお渡しするオリジナルデザインのマッチも配布しますので、「とりあえずこれで色々な国産花火が楽しめる」セット花火となっています。
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